電車に乗れば嫌でも多くの人々の姿が映り込む。立っていたり座っていたり,酔って床に寝そべってしまっている人もたまに遭遇してしまう(まあそんな人は置いといて)。
そこで皆さんにやってもらいたいことがある。
電車でスマートフォンを操作している人がどれだけいるのかを。車両全ての人を数えるのは骨が折れるので,座席一列だけでも構わない。
そんなお願いをせずとも答えは明確だろう。きっと8割の人がスマートフォンを操作していることだろう。まるでそれが人間の仕事であるかのように,画面に頭(こうべ)を垂れて目の前の情報に視力を奪われている。
スマートフォンが誕生してからインターネットとの距離がより縮まったことにより,常に簡易的娯楽を得ることができるようになった。海外の脳科学調査でも,スマートフォンからは簡単にドーパミンが得られることが判明している。
知らないうちにスマホの奴隷になっている自分自身も恐ろしい。
だから,文庫本でも一冊鞄に入れておこう。文字の世界とは,知識と語彙に溢れた集合体だ。絵や図などは少ないため,その世界は自分の脳で想像しなければならない。難しいかもしれないが,これが意外と面白い。
スマホなどの電子機器でも読むことは可能だが,ブルースクリーンを通すよりも紙媒体の書籍を読むことで,ストレスが20%ほど軽減されることも立証されている。
これはいわば,スマホ社会へのささやかな抵抗だ。
さあ顔を上げてみよう。そこには見えていなかった繊細な世界と,無自覚な奴隷がいるから。