私は芸術家になりたかった。
小学生の頃から歌や絵が好きだった。下校中は人目も気にせず大きな声でTVアニメの主題歌を歌ったり、自由帳にはゲームに出てきそうなモンスターを描いたり、時には作文用紙にファンタジーな冒険譚を書いたりもした。子どもは頭の中のイメージを具体的に現実に表現することはできないが、技術がないなりにその手を動かし、声にして、形にしようとする。私もその一人だった。
だからと言って、中学生・高校生・大学生となってもそれらの技術をあげようとしなかった。音楽に関してはボーカルに憧れていたこともあり高音が出るように練習を重ねたこともあったが、とても美しい歌声とは言えなかった。絵や小説に関しては、皆に呼ばれるような素晴らしい絵画も文章も造ることなど絶対にできないと思い、そもそも努力さえしてこなかった。楽しいと思っていたことは、いつしか楽しく思えなくなり、心の中にしまい込んでいた。
人間は他の生物に比べ脳が非常に発達している。だから現代のような社会と文化を構築することができた。創造する力こそ、生に彩りと充足を与えてくれる。
人間は「今」が一番若いとよく言うが、新しいことも今始めるのが一番早い決断なのではないだろうか。だから私はペンを取り、マイクを握り、文字を綴る。



