「あなたは自分がバカだと思いますか?」
こう質問されて「はい」と素直に答える人は少ないと思います。だって,自分がバカだなんて事実は認めたくないし,自分は人よりできていると思った方が人生は幸せになれるかもしれません。しかし,実際のところ自分は本当にバカで無知なのかはわかりません。賢いのか,実はそれとも阿呆なのか,そしてその線引きとはどのあたりなのか。それらが理解できる一冊を今回はご紹介します!

概要

『バカと無知 人間この不都合な生きもの』橘玲(新潮新書)
世はまさにSNS時代。SNSによって自身のプライベートから他人の私生活や痴態なども覗き見ることができます。そんな中,迷惑行為を犯したり失言したりして炎上する姿も当たり前になってきました。「なんて馬鹿なことをしているんだろう」と感じることも少なくありません。そしてそんな姿を炎上に乗っかって罵詈雑言で攻撃する。それは正義のウラに潜む快感,差別や偏見など,知らないうちに自分の行為を肯定しまっています。それこそ人間の本性であり,自らの言動や行動に多少の注意を払わなくてはなりません。それに気づくことで少し生きやすくなります。
この本は,作者の考えをただ羅列しているのではなく,数多くの実験・検証結果を報告し,科学的知見から人間の本性や行動原理などを説明しています。それにより,人間の心理に対して根拠をもつことになり,読者が自身を見つめ直すきっかけを与えてくれます。
読み終わる頃には,自分はどれだけバカ(に近いもの)だったのかを理解し,それを改善するための手立てを講じることでしょう。
作者について
この本の作者は橘玲さん。1958年生まれで2002年に金融小説『マネーロンダリング』で作家デビューを果たしています。その他にも,『お金持ちになれる黄金の羽の拾い方』『言ってはいけない 残酷すぎる真実』などの著書を出版しています。
彼は零細出版社に入社したり,編集プロダクション会社を立ち上げたりと,出版関係の仕事に関わっていました。そして,海外株を購入するためにオフショア銀行を開設し,その体験を本にしたりその知識で経済に関する知見を広げていきました。(Wikipedea参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%98%E7%8E%B2)
人はどうしてバカと無知を晒してしまうのか
この問いに対して書籍は一言で表しています。
「人を攻撃することが快感だから」だと思います。
例えば,ネットニュースで一番アクセスを集めるのは「芸能人と正義の話題」だそうです。メディアが「こんなことをして許されるのか」と世間を煽りその対象に非難の目を向けさせたり,SNSで迷惑極まりない不道徳な人間がいれば動画に残され晒し者にされたりする。それらの攻撃をする人々は「制裁」だとか「これが必要な行動」だとか自身を肯定します。その行動に悪意があるとは微塵も考えません。なぜなら,正義は常に正しい者が行う理念だと考えられるとともに,その正義が最大の娯楽(エンタテイメント)だからです。
スシローで醤油をボトルのまま直接舐めた少年に対して多額の賠償金は請求されたことも氷山の一角です。無論,醤油を舐めてスシローのイメージダウンをさせ,実際に株価も暴落させた少年の行動は良くありません。それがSNSによって拡散され,必要以上に暴言や個人情報特定を進めてしまったことは正義なのでしょうか?

他の例で言うと,欧米で問題となっている「キャンセルカルチャー」です。
キャンセルカルチャーとは,大成した人,何かを成し遂げた人の過去の不適切な行為を掘り下げて炎上させたり立場を貶めたりすることです。日本で言うと,東京五輪で楽曲を担当するミュージシャンが過去にいじめ行為をしていたとして辞任した事例があります。海外でもキャンセルカルチャーが頻発しているといいます。
ここまでくると,正義の概念なんてあってないようなものですね。悪意のある行動は許せませんし,そんな行動をした人を貶めたい気持ちが湧く気持ちもあります。しかし,その結果その行動は果たしてバカではないと言い切れるでしょうか?
まとめ
私が取り上げた内容は全てこの書籍からの引用です。この他にも,バカと無知を裏付ける理由や世界で起きている事例が数多く載っております。
人はステータス=自尊心を守るためならなんでもやってしまう生き物です。だから,都合の良いことだけ耳を傾けて,自分を正当化する理屈を考えてしまう。だからこそ,この本を読んで「人間の本性=バカと無知の壁」を乗り越えて,もっと生きやすい社会を作っていきませんか?
この記事を読んでいただきありがとうございました! 下記にこの書籍と,橘玲さんの著書をいくつかリンクを載せますので,少しでも興味をもたれた方はどうぞご自身の手でお読みください!